道路や橋梁、トンネルなどコンクリート補修工事の仕上げは色付きの防水材を塗るのが定番。しかし綺麗な見た目と裏腹に、保守・点検をする側からすると「どこを直したか分からない」「コンクリートをはつらないと異常箇所が見えない」といった問題が発生します。
エムビーエス(山口県宇部市)の「スケルトン工法」は、透明のコンクリ―ト補修材を仕上げに使い、施工後のコンクリート表面が見える画期的な補修工法。阪神高速道路など各地のインフラ工事で採用されています。詳細を聞きました(聞き手:イプロス編集部)
今回紹介する技術と製品
コンクリート構造物防災コーティング工法 スケルトン工法
スケルトン工法は、透明特殊コーティング材をガラス連続繊維シートに含浸させ、非常に高い透明度を実現したコンクリート補修工法です。施工後もコンクリート表面を目視で確認でき、問題箇所を素早くピンポイントに発見できます。
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補修した箇所を隠してしまう色付きの防水材仕上げ。以後の点検作業に悪影響
山本社長
――従来のコンクリート保守工事の問題点を教えてください。
橋脚やトンネルなどコンクリートは劣化するとひび割れやはく離、膨張などの変化が現れます。そうなった時は、傷んだ部分のコンクリートをはつって塗り直したり、鉄板やカーボン、アラミド繊維で強化したりして補修します。そして最後は、色付きの防水材を表面に塗り、補修した箇所を覆って仕上げます。
見た目が綺麗になりますが、実はここに大きな問題があります。「工事した箇所が分からなくなってしまう」のです。
――見えなくなることの何が問題なのですか?
コンクリートは1回補修して終わりではありません。経年劣化するので必ず2回目、3回目と補修が必要になります。防水材で覆ってしまうと前回の工事箇所を特定するのが難しく、結局、不要な部分までコンクリートをはつらなければならなくなります。コンクリートのはつり作業は大きな手間と時間がかかり、作業者にとって大きな負担です。少しでもはつり作業を減らすことがコストダウンにつながります。
また点検作業でも、どこを重点的に点検すればいいか分からず、広範囲を点検しなければなりません。見た目では状態が把握できないので打診や赤外線など特殊な点検作業が必要となり、大きな時間と手間のロスが発生します。
コンクリート表面まで透けて見える!柔軟なガラス繊維でコンクリートも強化
――スケルトン工法とはどのようなものですか?
「スケルトン工法」は、そうした問題を解決するために開発したコンクリート補修工法です。
補修工事を行った箇所に透明の特殊コーティング材「MBSクリアガード」を塗り、その上に高強度のガラス繊維シートを貼り、仕上げにMBSクリアガードを重ねて施工が完了。使うのは2種類の材料だけで、とても簡単な作業で施工できます。
塗った後は、コンクリート表面の砂粒が確認できるほどの透明度で、いつ、どこをどのように補修したのがすぐ分かります。目視検査だけで異常箇所を素早く特定できるようになり、点検作業を大幅に省力化でき、予防保全に最適です。
コンクリート保護性能も高く、防水性と水蒸気透過性を兼ね備えているので、表面保護内部の結露による膨張やひび割れ、はく離を防ぐことができます。ガラス繊維シートは柔らかく自由に変形できるので細かな場所まで施工ができます。
NEXCOやJRなども採用。全国の道路や橋梁、トンネルの補修工事で使われる
――採用された実績を教えてください
NETISに登録され、NEXCOやJRが定める剥落防止性能もクリアしています。
例えば、阪神高速道路のコンクリート維持工事や山陽自動車道の橋梁補修工事、第二京阪道路三ツ島西工事、第二京阪道路小路トンネルなど、全国各地の高速道路や橋脚、トンネルなどにすでに使われています。
――今後について教えてください
いまの日本は、インフラを新たに整備するのではなく、既存インフラを延命化して使う方向にシフトしています。長寿命化するためには予防保全が重要です。コンクリートの表面保護をすべて透明にし、状態を定期的にモニタリングできれば、異常や不具合を早めに発見して対処できるようになります。消費型の「壊して造る」から、持続型の「活かして使う」社会に変わるなか、スケルトン工法は新たな社会構築に役立つものと信じています。今後は協力会社とともに協会を立ち上げ、スケルトン工法の普及拡大に努めていこうと思っています。